吉村章

 「近いうちに」という言葉が連日、新聞紙面で取り上げられている。食事会の席で中国の友人とこの話題になった。といっても彼が聞きたがったのは、衆議院の解散時期ではない。「近いうちに」という言葉を使うときの日本人の感覚について、である。  「近いうち、とは具体的にいつを指す言葉?」と彼は熱心に質問する。曖昧な表現で会話が成立する日本人が、彼には不思議に見えるようだ。 言葉の話し手と受け手の感覚のズレ。これを「基準の感覚差」と言う。異文化研修では必ず取り上げるテーマである。つまり、話し手と受け手のモノサシが一致しているかどうか。 異文化間では双方のモノサシがずれていたりして、認識のズレが生じ、これがコミュニケーションギャップを引き起こす。 日本人は言うべきことをはっきりと言わないことが多い。日本人同士のコミュニケーションでは互いに空気を読み、相手が期待していることを考える。だからコミュニケーションギャップは生じない。しかし、中国人を相手にする場合は言うべきことははっきり言うべきだ。これがコミュニケーションギャップを未然に防ぐポイントである。実は日本人同士でもそう心がけたいのだが。